うつ病について

およそ10~15人に1人が
生涯にうつ病を経験すると考えられています

わが国のうつ病の有病率は、大うつ病の12カ月有病率※1が2.2%、生涯有病率※2が6.5%、また、軽症うつ病の12カ月有病率は0.8%、生涯有病率が2.7%と報告されています。およそ30人に1人が過去12カ月間に、およそ10~15人に1人がこれまでの生涯にうつ病を経験した計算になります。 また、男女比でみると、女性の方がうつ病になりやすく、およそ男性の2倍多いと考えられています。

※1
12カ月有病率:過去12カ月間にその病気にかかっている患者の割合のこと。
※2
生涯有病率:調査時点までの生涯にその病気にかかっている患者の割合のこと。

うつ症状とうつ病の違いと精神症状

うつ病はその病名が示すようにうつ状態を中心症状とする病気です。悲しいことやストレスが重なれば誰でも憂うつになったり気分が沈んだりしますが、そのうつ状態とうつ病の状態には多くの類似点があり、はっきりと区別がつかないことが少なくありません。つまり、両者は病的であるかないかの違いに過ぎないのです。病的でないうつ状態は一時的なもので時間の経過とともに自然に回復していきますが、うつ病は自然に回復することはなかなか難しく、長期間にわたって持続します。 また、うつ病にはさまざまな身体症状が現れる場合があります。

気分・意欲・思考の低下
がみられる精神症状

うつ病はうつ状態を示す気分の低下にはじまって、少し症状が重くなると意欲がなくなり、思考や判断力が低下していきます。さらに症状がひどくなると、顔つきや態度、話し方、行動の様子に明らかな変化がみられるようになります。不安や焦りなどが最初に出現した場合は診断が困難です。

気分の低下

うつ病の代表的な症状で、気分がひどく落ち込む、憂うつ、もの悲しいなどの気分の変化が現れ、ひどく不安になる、落ち着かない、イライラするなどの不安や焦りが現れます。表情から笑顔が消え、理由もなく涙を流すこともあります。多くの人で朝方が最もひどく、夕方になると少しよくなるという「気分の日内変動」がみられるのが特徴です。気分の低下がひどくなると「自分はダメな人間だ」というように自責感や罪悪感を感じるようになり、重症になると「死にたい」という気持ちが現れます。

意欲の低下

何事にもやる気をなくしてしまい、無気力状態となり、ひきこもりがちになります。趣味や楽しみに対してこれまでと同じように興味・関心がもてなくなり、何をするのもおっくうに感じるようになるほか、気分転換を図ることができにくくなって、休日は寝床に入ったまま一日中過ごすようになります。また、意欲の低下がひどくなると学業や仕事、家事に支障が出るようになり、登校拒否や出社拒否につながることも少なくありません。

思考の低下

頭がボーっとしてさえなくなり、考えがまとまりにくくなります。物事に集中することができなくなり、注意力が低下するほか、判断力も鈍るために決断を下すことが困難になります。このため、自分の考えや行動に自信がもてなくなり、物事を悪い方向に考えたり悲観的にとらえるようになります。重症になると、取り返しのつかない罪を犯したと思い込む罪業妄想や、不治の病にかかってしまったと思い込む心気妄想などを訴えることもあります。

うつ病に伴う身体症状

うつ病は身体のいたるところに弊害を及ぼします。睡眠障害、食欲減退・体重減少、全身のだるさ・疲れやすさは多くのうつ病にみられる身体症状です。

睡眠障害

身体症状で特に注意しなければならないのが睡眠障害です。睡眠障害はうつ病の身体症状としてほとんどすべての人に出現するといっても過言ではありません。うつ病に現れる睡眠障害としては、眠れない、眠ってもすぐに目が覚めるなどの不眠が全体の8割を占め、眠っても眠り足りない過眠が2割を占めます。特に、普段より早く目が覚める早朝覚醒を訴える人が多いようです。

食欲減退・体重減少

食欲不振と体重減少もほとんどのうつ病にみられる症状です。何を食べてもおいしくない、味がわからない、砂をかんでいるような感じ、などと表現され、なかば義務感で食事をするようになります。食欲が低下すると人によっては1~2カ月間で体重が5~10kgも減ることがあります。

全身のだるさ・疲れやすさ

うつ病になると特に体を激しく動かしたり働きすぎているわけでもないのに、全身がだるく感じられ、疲れやすくなります。うつ病の疲労感は休息しても疲れがとれないのが特徴です。また、だるさや疲労感に日内変動があることが多く、午前中はひどくだるいのに、午後や夕方になると軽快することがあります。

その他の身体症状

うつ病になるとほぼ全身の身体症状が現れます。動悸、発汗、めまい、しびれ、口の渇き、胸部圧迫感・呼吸困難感、頭重(頭が重い)・頭痛などの自律神経症状や、便秘や下痢、吐き気・嘔吐、腹痛、腹部膨満感などの胃腸症状などはよくみられる症状です。そのほか、性欲の減退もよく現れる症状の1つです。

症状の程度や現れ方による
うつ病の分類

症状の程度や現れ方によるうつ病の分類は臨床診断に用いられている診断基準に基づいたもので、以下のように分類されています。

大うつ病性障害(大うつ病)

いわゆる一般的に考えられているうつ病です。1回のみで完全に回復する場合もありますが、うつ病の人の半数以上は再発を繰り返す傾向にあります。再発が繰り返されると症状の期間が長引き、また、繰り返す期間が短くなる傾向がみられます。なお、「大うつ病」は「Major Depression」の訳語であり、『大』はうつ病が重いことを示しているわけではありません。

気分変調性障害(軽症うつ病)

軽いうつ状態が慢性的に続くものをいいます。うつ病は数カ月から長くて半年ぐらいで回復することが多いのですが、軽症うつ病の場合は2~3年以上続くことが珍しくありません。

統合失調感情障害

幻覚や妄想などの統合失調症の症状と躁またはうつ症状が混在して現れるものをいいます。躁型とうつ型の2つのタイプがあります。

どのように診断されるの?/
問診と診断基準

うつ病は通常の憂うつが日常生活、社会生活に支障をきたすほどの病的な状態になるものです。しかし、病的であるかないかはなかなか区別がつかないため本人が病気であることに気づきにくく、なかなか受診につながらないことが少なくありません。
診断は問診からうつの状態を把握して診断基準に照らしながら病的な状態であるかどうかを評価していきます。うつ病の中には精神症状が目立たずに身体症状が前面に現れる仮面うつ病の状態を呈することがあり、本人がうつ病であることに気づかない場合もあります。なかなか治らない身体症状がある場合にはうつ病を疑う必要があるかもしれません。

本人または家族への詳細な問診が診断のベース

うつ病の診断では、下記のような問診を中心に進められます。

このほかにも、既往歴や家族歴、もともとの性格傾向などの情報も診断には欠かせません。
また、本人だけでなく家族からみた客観的な症状の把握も大切です。特に、子どもや高齢者の場合には本人が自分の症状について把握できていなかったり、うまく伝えられないことが少なくないため、家族が代わって症状を伝える必要があります。

診断基準に基づいた
うつ病の診断

うつ病の診断は、診断基準をベースに行われます。診断基準としては、WHO(世界保健機関)の国際疾病分類である「ICD-10」と、米国精神医学会の「DSM-V」の2つが主に使われています。これらの診断基準では、うつ病にみられる症状を記述した診断項目を多数あげて、それらに当てはまる項目がいくつあるかによって決めるようになっています。
また、うつ病の診断においてはうつ状態を把握するための評価スケールがいくつかあり、必要に応じて用いられます。これらの評価スケールではうつ病の人が自己診断的にうつ状態を把握できるものもあります。評価スケールの得点が高いからといって即座にうつ病であると診断できるわけではありませんが、うつ病である可能性を疑うための1つの目安となります。

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治療方法

治療のポイント

うつ病治療の基本は休養と薬物療法です。うつ病になると心身ともにエネルギーが枯渇した状態になりますから、さまざまなストレスから離れてとにかく休養をとることが重要になってきます。うつ病になりやすい人ほど休養をとることに罪悪感や焦燥感を抱きがちですが、早めの十分な休養が早期回復につながることを理解し、ストレスを受けにくい環境づくりに取り組みましょう。家族あるいは周囲の人たちに十分に休養をとれる環境を整えてもらうようなサポートも大切です。自殺願望が強い場合や心身の消耗が著しい場合には入院治療を行いますが、そこまで症状がひどくなくとも、たとえば幼い子どもを抱えていたり、家族の理解が得られずに休養できない場合など、自宅で十分に休むことができない環境の場合にも療養を目的に入院することもあります。

十分な休養をとりながら薬物療法を行うことで、うつ病のほとんどは快方に向かいます。しかし、うつ症状を乗り切り回復期に入る(快方に向かう)と、活動性が上がるために逆に自殺企図(自殺を図ること)が増えることが知られていますから注意が必要です。回復期は症状の変化が激しいことを理解し、その変化を最小限に抑えるためにも規則正しい抗うつ薬の服薬を心がける必要があります。また、回復期においてはうつ病になりやすい思考パターンを改善させたり、症状を悪化させやすい対人関係の問題を解決できるスキルを身につけるなどの精神療法を組み合わせながら治療が進められます。

薬物療法

ルアドレナリンは意欲や気力、判断力、集中力、ものごとへの興味などに関連した神経伝達物質で、セロトニンは食欲や性欲、衝動性や緊張などに関連した神経伝達物質ですが、うつ病の人ではノルアドレナリンとセロトニンが欠乏した状態となっているためにうつが引き起こされていると考えられています。抗うつ薬はこの欠乏状態にあるノルアドレナリンやセロトニンの神経系に働きかけて活性化することで症状の改善をもたらします。

脳の神経伝達は神経細胞の先端にあるシナプス※が神経伝達物質をやりとりすることで行われますが、送り手側のシナプスから放出された神経伝達物質はすべて受け手側のシナプスに到達するのではなく、一部は送り手のシナプスに再び取り込みされて再利用されます。抗うつ薬はこの送り手側のシナプスに再び取り込まれるのを阻害することで欠乏状態にあるシナプスとシナプスの間(シナプス間隙)のノルアドレナリンやセロトニンを増加させて、神経伝達がうまく働くように作用します。しかし、神経伝達物質が欠乏した状態では受け手側のシナプスの受容体(神経伝達物質を取り込むところ)の機能が正しく働いていないために、抗うつ薬によってシナプス間にノルアドレナリンやセロトニンの数が増えてもすぐに効果が現れるわけではありません。抗うつ薬でノルアドレナリンやセロトニンが増加してから受容体が正しく機能するまでに一般的に2~4週間程度かかるとされ、受容体の機能が回復して初めて薬の効果が現れてきます。したがって、受容体の機能が回復するまで、シナプス間のノルアドレナリンやセロトニンの数が一定に保たれるように抗うつ薬を規則正しく服薬することがとても大切になってきます。また、薬の効果が出てくる前に吐き気などの副作用が現れることがありますが、対処可能な副作用ですので、主治医の先生と相談しながら薬をむやみに中止しないようにする必要があります。

※1
12カ月有病率:過去12カ月間にその病気にかかっている患者の割合のこと。
※2
生涯有病率:調査時点までの生涯にその病気にかかっている患者の割合のこと。

三環系抗うつ薬

第一世代の抗うつ薬で、とりわけノルアドレナリンの再取り込みを強力に抑えて効果を発揮します。高い抗うつ効果が得られますが、その反面、眠気、口の渇き、便秘、めまいなどの抗コリン性副作用も強く出やすいという特徴があります。一部の三環系抗うつ薬には副作用の発現を抑えた第二世代の抗うつ薬があります。

四環系抗うつ薬

セロトニン再取り込み阻害作用がないのが特徴で、三環系抗うつ薬に比べて副作用の発現が少ない第二世代の抗うつ薬に属します。副作用が少ない分、使いやすくなったともいえますが、効果は三環系抗うつ薬には及びません。

選択的セロトニン
再取り込み阻害薬(SSRI)

第三世代の抗うつ薬で、選択的にセロトニンの再取り込みを阻害することをターゲットにした抗うつ薬です。抗うつ作用は三環系や四環系よりもやや弱いとされていますが、その最大の特徴は従来の抗うつ薬に比べて副作用が少ないという点で、非常に使いやすい抗うつ薬といえます。

セロトニン・ノルアドレナリン
再取り込み阻害薬(SNRI)

第四世代の抗うつ薬で、セロトニンだけでなくノルアドレナリンの再取り込みも選択的に阻害することから効果の面では三環系に近い抗うつ作用があり、副作用はSSRIと同程度とされています。また、SNRIは症状が多彩なうつ病において広範な症状に有効とされる抗うつ薬です。

薬物療法以外の治療

うつ病治療には薬物療法以外に、薬物療法と組み合わせて行われる身体療法や精神療法があります。たとえば、抗うつ薬で効果がみられない場合や自殺企図(自殺を図ること)が切迫している場合には電気けいれん療法が行われることがあるほか、季節性うつ病のように季節の変わり目が発症の原因となるうつ病では高照度光刺激療法が有効であることがわかっています。
また、症状がひどい極期は十分な休養と薬物療法が中心ですが、抗うつ薬によって快方に向かう回復期に入ると精神療法が行われるようになります。うつ病治療で行われる精神療法にはうつ病に陥りやすい思考パターンを改善する認知療法やうつ病の人が抱えている対人関係の問題を解決することに焦点を当てた対人関係療法があります。
さらにうつ病の症状が改善すると復学や復職に向けたリハビリテーションが行われます。リハビリテーションはうつ病の人が社会復帰するための準備期間ともいえ、この時期は再びストレスにさらされるために再発に陥りやすいことから、心身の状態に注意を払いながらリハビリテーションを進めることが重要になってきます。

本サイトで解説する病気の症状は典型的なものを紹介したもので、記載された症状がその病気をもつすべての方に当てはまるわけではなく、また症状のどれかに当てはまるからといってその病気であることを示すものではありません。治療法その他についても、あくまでも代表的なもののみを掲載しており、治療法すべてを網羅するものではありません。病気の診断および治療に関しては、必ず医師による説明を受けるようにしてください。

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治験について

治験とは

皆さんは怪我や病気の際にお薬を使用したことがありますよね?
これらのお薬は厚生労働省から許可を得て始めて市販され、私たちのもとに届いてきます。
厚生労働省がどうやって許可を出しているかと言えば、それら開発段階の薬剤の有効性や安全性の調査データを確認することで許否を出しています。
この薬剤の安全性や有効性の調査をヒトで検証することを「治験」と言います。

治験には大きく分けて
第Ⅰ相試験から第Ⅲ相試験までの3つのステップがあります。

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